最近読んだ本:「ゆれる」by 西川美和2019/02/09 18:16

「ゆれる」

西川美和さんの、映画を小説に書き落とした作品。この前モルジブで週末泊まっていたホテルに置いてあったので、読みました。面白くて1日で読みきりました!

この本も、この前読んだ角田光代さんの「坂の途中の家」みたいに、いろんな読み方ができると思います。日本の「家制度」的な伝統、兄弟関係、恋愛小説、などなど。私としては、人が自分の生き方を決めるとはどういうことなのか、という点を考えさせられました。

私自身は幸い、継がなければいけない稼業もないし、両親は「自立して、幸せでさえいてくれれば、何処で何をやって誰と一緒になっても構わない」という大変ありがたい放任主義だったので、好きなように生きてきたなあ、と我ながら思います。でも、日本では、この小説に出てくるように、やりたいことを諦めたり、それがわからなかったり、わかっていても自分でブレーキかけていたり、何というか、しがらみに絡み取られることが多いような気がします。やりたいことをやっていても、それなりの罪悪感や孤独感を味わうことになる。

一方、世界には超個人主義の国も沢山あり、スリランカもまさにそうだと思います。自分のことしか考えてない人があまりに多い。もうちょっと組織への忠誠心とか、仲間をいたわる気持ちとか、日本ほどでなくていいけど、ないのか?と日々びっくりさせられます。そこが、内戦の終結からまだ10年経っていない国の国民の生き方なのかもしれませんが。

結局、自分の幸せと、自分の属する共同体(家族・職場等)の幸せと、バランスを取りつつ、納得できる生き方ができればベストなんでしょうけど、それが難しい。でも日本社会はあまりに犠牲を当たり前にしすぎるような気がしてなりません。

と、以上は私の理屈っぽい読み方で、小説はこんな小難しいことを考えなくても十分楽しめます。さすが映画監督が書いただけあり、描写がとても美しい。日本語の美しさに感動しました。彼女の他の本もこれから読むつもり。

余談になりますが、最近新しく着任された駐コロンボの日本大使は、昔山形県警や皇室関連の部署で働いていたという異色の経歴の方なのですが、さすが皇室関連におられただけあり、日本語がきれい!この前、新年会のスピーチで淀みなく話されるのに感動しました。私が興奮してこの話をうちのスリランカ人スタッフにしたところ「日本人で日本語がきれいに話せるの、当たり前じゃん」みたいな顔をされてしまいました。。。