少子化問題、一考。2019/01/11 21:47

少子化問題は人口問題の1つなので、国連人口基金にも関わりのあるトピックということで、ちょっと自論をまとめておこうと思いました。(あくまで自論です。)

まず、少子化問題は、私に言わせればその核はジェンダー問題です。なぜ子供を産もうと思わない&思えないのか、それは単に教育費が高すぎるとか、子供を産んで自分の自由が奪われるのがやだとかだけではない、根本的なところでジェンダー、つまり男女の社会的に与えられた役割に関わる格差・差別、についての問題だと思います。

なぜ日本女性が子供を沢山産まないのか。ひとつは、これは当たり前の結果。先進国でTFR(合計特殊出生率)が高い国はほぼありません。国が栄え、教育を受けた女性が増え、加えて社会保障制度が整って、子供に老後を頼らなくてもよくなれば、「自然と」子供は2人前後でいいや、と思う人が増えるというのが全世界のトレンドです。これを、戦前や戦中と比べて、昔はもっと子供を産んでいた、とか言ってた人がいましたが、すごい勘違いと思います。

第2に、子供を産みたくても産めない、という状況があるのはよく知られている通りです。待機児童問題、男性の育休取得率は世界でも最下位クラス、というのでは、どう考えても仕事と育児の両立は難しい。そうなった時に、子供を産む方を取れる人はどんどん少なくなっています。非正規社員が増えている昨今、経済的にはその選択肢しかない、という人も多いでしょうし、教育を受けた女性は、自分のキャリアを投げ捨ててまで子供を産みたい、と思えないという場合も多いでしょう。だからこそ、鍵となるのはいかに女性が出産・育児をしつつ、キャリアを「男並みに」きづいていけるのか、という課題です。「男並みに」というのは、出産や育児で女性だけがキャリアの面で不利益を被らない、という意味です。このために大事なのは、逆説的ですが、日本人男性が働き方を変えることです。日本の長時間労働が少子化の一番の問題、というのはやーっと最近になって、超遅ればせながら認識されてきたような気がします。そういう意味では、少子化は根本的に、女性でなくて、男性の問題だと思います。

2番目と関連して、3番目には、未だに伝統的な家族間が支配的である環境では、前述したような理由とは別の理由で、産むという選択が難しいと感じる人々がいます。例えばシングルマザー。どこかの自治体は、少子化対策のために婚活応援のイベントとかやってるみたいですが、そんなんよりシングルマザーが楽に子育てできるような環境をつくる方がよっぽど効果的だと思うんですけど。そしてもちろん近年やっと認知されてきたLGBTのカップル。彼らだってもちろん子供は育てられますが、言うまでもなく社会的なハードルはすごく高い。あとは、結婚してない事実婚・パートナーシップの人々へも結婚しているカップルと違わない程度の融通(税制上の優遇を含む)が利くようになれば、それも出生率にはプラスに働くと思います。結婚が出産への不可欠な前提とされる社会規範を崩すことから、本当の少子化対策は始まれるのではないでしょうか?実際、先進国で出生率の回復に成功している国(北欧やフランス)では、もっと多様な家族のあり方を認められるような制度が整っています。

言いたい放題書きましたが、少子化問題で大事な原則は、ただ単に出生率の向上を目的にするのではなく、社会的な制度や不妊治療の環境を含め、子供を産みたい人が産める環境をつくる、ということです。産みたくない人はもちろん産まなくていい。何人産みたいかも、いつ産みたいかも、自分で決める。それがリプロダクティブ・ライツの基本原理であり、国連人口基金が目指すところでもあります。