近況2015/06/06 23:18

またまた1ヶ月以上ぶりの更新になってしまいました。 5月もとっても忙しかったです!ハイライトは国連事務総長バンキムンの来訪でしょうか。7年越しのプロジェクトとなってしまったハノイの国連ハウスがついに完成したので、彼がその開所式のために奥様同伴で来ていたのでした。エチオピアで働いていた時は、彼がアフリカン・ユニオンのサミットのために毎年来ていたため、国連機関の調整が仕事だった私は、毎回いろいろと準備に走り回っていました。今回は、一国連事務所の所長代理としての参加なので、エチオピアの時ほど忙しくなかったのですが、ちょうどその頃、私はなぜか親知らずの周りの歯茎が腫れてしまい、眠れないほど痛くなってしまいました…。なので、ディナーに呼ばれた時も、食べられるか?という感じだったのです…。そのディナー(写真)ですが、なぜか私がマダム・バンの隣に座らされ、びっくり。プロトコル的にはこれでよかったのか?とかなり疑問だったのですが、彼女の隣に座っていたおかげで、事務総長が話し中でみんなが食べずに聞いていた時も、「ほら、食べましょう」と促されて、早めに食べ始められたのはよかったかも(?)なんて。いやはや、貴重な機会でした。

それから、5月は引き続き1年以上続けている「人口法」についてのアドボカシーでいろいろと政府の偉い人や議員さんたちと会っていたのですが、なんとそのうちの1人で、元副総理大臣、今は共産党のポリトビューロ(トップ16人)の1人でもあるというニャン氏との会議の模様が、VTV1というこちらでいうNHKにあたる放送局の夜7時のニュースに出てしまいました!国連職員と政府の要人の会合がこんなプライムタイムのニュースに出るというのは前代未聞らしく、私のスタッフは大興奮でした。私は、ニュースに出たと聞いて、なんかやばいこと言わなかったか?と心配になってしまいましたが(撮影されている時はそんな全国放送のテレビ局のカメラだと思わなかったので!)私たちが何を言っているかは直接は放送されず、会合の様子の映像にナレーションが入っていただけだったので、大丈夫でした。ほっ。

ジュリはお稽古事に加え、最近ローラーブレードと自転車を買ってもらい、この暑いのによく外へ出かけています。ローラーブレードは結構あっという間に上手になり、まだ危なっかしくはありますが、一応坂でも大丈夫になったようです。自転車は、パパと一緒によくサイクリングに行っていて、パパの運動にもなっているのがいいです。

ピーターはこのところはずっと歯医者通い。相当痛い思いをしているみたいで、かわいそうですが、なぜかこの歯医者さんとスタッフが(全員女性)ピーターのファンみたいで、行くたびにキャーキャー言われてるそうです。おかげで(?)きちんと通っているのは、ありがたいです。

5月は40度前後の日が多く、本当に暑かったのですが、6月に入って少しだけ涼しくなりました。夏はまだまだこれからですが!

国会議員さんたちとの会議。2015/06/07 23:15

今回は、先週開催した「人口法」に関する会議について書きたいと思います。

ベトナム政府はここ1年ぐらい「人口法」という新しい法律をつくろうとしており、それに現行の「ふたりっ子政策」を入れるかどうかで、かなり激しい議論が繰り返されています。私たち、国連人口基金としては、人権の観点からこれは許し難いものであり(生殖に関する権利は、子供の数やタイミングを自由に決めることが前提なので)そのためにこれまでずっとアドボカシーを行って来ました。また、人権を持ち出さなくても、ベトナムの出生率は過去10年ぐらいずっとリプレイスメント・レベルと呼ばれる(1人の女性につき2.1人)を下回ってきたので、はっきり言って、ふたりっ子政策を続けるべき理由はないのです…。ベトナムではものすごいスピードで高齢化も進んでおり、このままふたりっ子政策を続けたら、将来的には日本と同じような低出生率・人口減に悩まされる事態になりかねません。

議員さんの中にも、政府の要人の中にも、私たちと同意見の人はかなりいるのですが、それでも保守的な人々の間には、ふたりっ子政策を緩めたら、ベビーブームが起こる!と言い張っている人もいて、なかなか簡単ではありません。その中でも、ベトナム保健省の中にある、人口・家族計画局という部署の人たちは強硬派で、今までのワークショップでも私たちと反対意見を述べてきました。反対意見があること事態は別に悪いことではありませんが、私たちがお金をだしている会議で、堂々と私たちの意見を批判し、しかもひどい時は私たちに反論する時間も与えずに会議を終了する、みたいなことさえありました。

そこで、先週の会議ですが、これは国会議員約50人で形成されている社会問題審議会のようなもの(日本語訳が正しいのかわかりませんが)と共催したもので、人口・家族計画局の人も参加していました。ベトナムでは国会が年2回行われるので(5月末から6月にかけてと、10月)その時には、国会議員が地方から全部集まっているのを利用して、このような会議を夜6時ぐらいから行います。3つほどプレゼンテーションがあった後、人口・家族計画局がいつもの意見を述べだし、しかも私の部下がしたプレゼンテーション(韓国と中国の例を挙げて、ベトナムが出生率低下政策を続ける必要がないことを説明したもの)をあからさまに批判しだしました。これはいつものことではあるのですが、私は今回はどうしても我慢ができない、と思い、最後に意見を述べる機会を与えられた時(これも私の部下が交渉して、時間を与えてもらったものです。そうでなかったら、反論せずに終わりになってしまっていたでしょう。)ついに問題の核心をつくことをはっきり言ってしまいました。つまり、人口・家族計画局の人たちは、ふたりっ子政策を続けることによって、政府の予算と自分たちの職を確保することができる、という事実を指摘してしまいました…。これは英語でよく言う「部屋の中の象」(部屋に象のような大きな動物がいるのに、誰もそれを話題にしないこと)にあたることで、明らかな事実なのに、これまで誰も敢えて言わないことだったんです。政治的にセンシティブですから…。

さすがにこれだけを指摘したらまずいと思ったので、私はベトナムのリーダーが直面している3つのジレンマについて話し、そのうちの1つとして、自分たちの個人的な利益に焦点を当てることと、国全体の利益について考えることのジレンマを説明しました。その中で、人口・家族計画局がふたりっ子政策を擁護せざるをえない理由を指摘したのです。

私は言ってしまってから、かなりやばかったかなー、もしかして仕事を辞めさせられたりしないか?と思ってしまいましたが、うちのスタッフはもちろん喜んでいて、他にも私たちのサポーターである人たちは「言ってくれてよかった!」という意見でした。何より、一緒に議長をした社会問題審議会の会長の女性(写真で真ん中の人)が私と同意見だったので、ほっとしました。帰りのエレベーターの中では、人口・家族計画局の局長も「今になって自分が意見を変えたら、下からの突き上げがひどいから、無理だ…」とかって本音をぼそっと言ってました。

ベトナムのような中産国では、私たちのような国連機関の仕事も、草の根のコミュニティーレベルよりもこういった政策立案に関わるものが多くなります。これが結構やり甲斐があって、面白いのですが、今回のように勇気を持って誰も言わないことを言わないといけないこともあります。今回はちょっとひやっとしました!

卒業式(国際比較を含めて)2015/06/09 22:21

ジュリの通っている小学校は5年生までなので(中学校は4年あります)今日は小学校の「卒業式」でした。卒業式とは言え、ジュリの学校は小・中・高一貫なので、学校自体は変わりません。なので、正式には「卒業」ではなくて「ムーヴィング・アップ」(上にあがる)という言葉を使った式でした。

さて、日本の卒業式と言えば、私の時代では、合唱が何曲かあり、卒業生の式辞があり、在校生から卒業生を送る言葉があり、親や先生への感謝の言葉があり、卒業証書授与があり、とっても「泣ける」イベントだったという記憶があります。(今もそうなんでしょうか?)こちらのムーヴィング・アップ式は、もっとカジュアルでサバサバした感じで、そんなに泣ける〜という感じではありませんでしたが、それでも特にベトナム人の親たちはかなり着飾って、子供にあげる花束まで持ってきている人が結構いました。(そうなんです、年間200万円以上する学費でも、払えるベトナム人家族もいるんです。)

式の内容は、最初に各クラスの子供達が自分たちの成長についての詩を朗読するところから始まり、小学校の校長先生のスピーチ、その後に1人づつの卒業証書授与(この部分は日本と同じですね)、各クラス代表の子供達のスピーチ、それから全員による合唱があり、最後は先生たちへの花束贈呈。インターナショナルスクールにしては(とか言ったら怒られますが)かなりよくオーガナイズされた式でした。しかし、私にとって何よりも印象的だったのが、校長先生のスピーチの内容でした。一言で言えば「個性への賛美」だったのです。とにかく、自分らしさを大切に、自分の個性を育てて、誰か他の人になりたいとか、他の人だったらよかったとか思わずに、自分という人間のすばらしさを十分に楽しもう!と、そういう内容だったのです。そして子供たちが合唱した歌の内容も、自分の人生を自分で切り開いて行こう!という感じで、「他の誰でもない君が…」みたいな歌詞が繰り返されました。

これって、日本の小学校だったら、ありえない!と思ってしまったのは私だけ?というか、私の世代の日本人だけなのでしょうか?正直、小学校で個性なんてものを学校で話題にした覚えさえありません。どちらかと言えば、みんな同じことを勉強して、同じテストを受け、落ちこぼれないように、みんなと同じように成長していけばそれでいい(もちろん、みんなよりも勉強がよくできればその方がいいですが)という感じだったという記憶しかないのです。それどころか、私の行っていた公立小学校は、連帯責任が大好きで、誰か学年で1人でも悪いことをした子がいれば、全員がお説教を聞かされたり、反省文を書かされたり。個人の責任とか、個性とか、そんなものは少しも大切だと思われていなかった気がします。それに反発を覚えていた私のような子供は、大人になってから海外に出てしまう訳ですが…。ははは。

改めて、インターナショナル・バカロレア(IB)のプログラムのアプローチの違いを感じました。日本人の親たちから見ると、IBプログラムはなんか「ゆるい」というか、しっかりそれぞれの学年で勉強しなきゃいけないことを勉強しているんだろうか?と心配になってしまうことが多いのですが、現代の世の中で生き延びる力、みたいなものをつけるのには、やっぱりかなり違ったアプローチが必要なのかもしれません。

さて、式の後は、それぞれのクラスへ戻り、カップケーキや果物を食べながらおしゃべりしたり記念写真を撮ったりする時間がありました。私がジュリを促して、担任の先生(ニュージーランド出身)と写真を撮ったのですが、1枚目を撮った後、先生が「お母さん、もう1枚撮って下さい」というので、もちろん!と撮った時のポーズがこれです。この先生もジュリの頑固さ(徹底して興味のあることにしか意欲を見せない!)にはほとほと困らされていたみたいで、このポーズが本音なのかもしれません!でもこの写真の後「ジュリはものすごく賢い子供ですよ」と笑いながら言ってくれました。さて、中学1年生はどんな1年になるでしょうか。

イェン・ドゥック村での週末2015/06/15 23:44

ジュリの小学校が先週木曜日で終わったので、金曜日1日お休みをとって、家族で週末旅行へ行ってきました。今回、どこへ行こうか相当迷ったのですが(近場で行けるとこは大体もう行ったので)結局同僚のオススメで、イェン・ドゥックという村で2泊することにしました。

イェン・ドゥックはハノイから東へ向かった、ユネスコ世界遺産としても夕景な景勝地、ハロン湾へ行く途中にあります。ハノイからは車で3時間弱。ここは殆どの場合、ハロン湾へ行くツアー客が途中でお昼に立ち寄るのが普通らしいのですが、私たちはもうハロン湾へは行ったし、ここで1泊した人の多くがもっと長く滞在したかった!と口コミに書いているのをみて、ここで2泊してみることにしました。

とても快適な車でイェン・ドゥックに着いて、まずはランチ。すごい品数の料理が次から次に出てきました。どれもベトナム家庭料理らしい、素朴な料理なのですが、野菜の味が違う!それもそのはず、全て今朝採れた野菜が使われているそうです。どれも本当に美味しく頂きました。

それから1日目の午後のアクティビティー。まずはいろいろな木・草等の説明をうけながらの村のウォーキング・ツアー。6世代に渡って昔からあるお家というのを訪問して、ベトナム文化の説明を受けました。その後、米の精米を手動でするのを経験してから(写真)、魚を伝統的な竹かごで捕まえるというのをやってみました。捕まえられはしなかったものの、ジュリはとっても楽しかったみたいです!夕食の後は、今度はデザートを一緒につくるというのがあり、お料理好きのジュリは特に楽しんでました。2日目は、自転車でのツアーで、ベトナムの民謡を歌ってくれるという農家を訪問し、その後、ヤシの木の葉からホウキを作るのを体験。また豪勢なランチの後は、これもベトナム伝統のウォーターパペット(水の中から操り人形が出てくる形)を鑑賞した後、実際にジュリは操り人形を操るのをやらせてもらいました。これもすごく楽しかったみたいです。それから、ベトナムでは旧正月によく食べる「バイン・チュン」というお餅のようなものをつくるのも体験しました(これは3日目の朝ごはんに出てきました)。3日目は朝からマーケットへ行き、地元の産物が売られているのを見て歩き(ジュリはカエルとカニに注目してました。カエルは食用です…)その後、村のお寺を見学。またウォーターパペット劇場へ戻って、今度はウォーターパペットを他の人が表から鑑賞している時に、私たちだけ特別に裏側から見せてもらいました!シンプルに見える劇でも、何人もの人が協力しながら上演しているのがわかり、感動ものでした。

地方の小さな村に2泊3日も滞在して、やることあるのかなー、飽きてしまわないかな?という私たちの心配は全くの杞憂に終わり、本当に充実した滞在になりました。何よりも、私たちの専属ツアーガードだったトゥイさんが、本当にこの仕事を楽しんでいるのがわかり、すごく気持ち良く過ごすことができました。彼女はハノイでホテルの受付嬢として働いていたこともあったそうですが、地元に戻って地元の発展に貢献しないか、と誘われて、イェン・ドゥックに戻ってきたそうです。彼女には「お友達に宣伝してね!」と言われましたが、こんなに素晴らしいツアー、あまりに沢山の人が来て人気になっちゃったら、その良さも失われてしまいそう、とちょっと自己中心的に思ってしまいました。私たちの滞在中は、他のお客さんはいなかったので、本当に貸切状態でしたので!でも、ピーターがフェイスブックのグループに投稿したら、早速興味のある人が何人かいたみたいです。特に小学生ぐらいの子供のいる家族には楽しめるし、勉強にもなるので、最高だと思います。

またぜひ、素敵なイェン・ドゥックでの時間を過ごすべく、再訪したいと思いました!食事だけでも、行く価値ありますし、きっと季節によっては違ったアクティビティーもありそうな気がします。ピーターのブログ(nacken.com/blog)にはこれからもっとイェン・ドゥックで撮った写真も載ると思いますので、興味があったら見てみて下さい。

ジュリの今年の夏休み2015/06/21 23:45

ジュリの学校は前述の週末旅行の前に早々と終わってしまい、2ヶ月以上ある長い夏休みが始まりました。今年は私がまだ事務所の代表代理という立場上、あまり長い休みは取れないので、ピーターとジュリはドイツで夏休みのほとんどを過ごすことにしました。でも、ドイツで友達もいなく、ずーっとおじいちゃんとパパと過ごすのも退屈だろう、と思っていたところ、ピーターがドイツ語も学べるインターナショナル・サマーキャンプというのを見つけました。ピーターのお父さんの家から車で1時間、とそんなに遠くないし、お値段もお手ごろ。ベトナムや日本でのサマーキャンプだと、英語を学ぶためのキャンプがほとんどなので、ドイツ語を学べるというのはジュリにはいい!ということで決めました。まずは2週間やってみることに。もしものすごく楽しかったら、さらに来月また2週間。もし空きがあったらですが…。結構人気らしいので。

しかし、ジュリは2週間も親と離れ離れになったことはないのです。当然ピーターも私もかなり心配していたのですが、本人は「もっと独立したい」と。知ってる人が誰もいない環境に飛び込んでいくのも、それほど抵抗がないみたいです。彼は親が思っているほど引っ込み思案でもないのかも…。

いよいよ今日、ピーターがジュリを車で送って行ったのですが、さて、どうなるでしょう!キャンパスはなかなか素敵な感じ(写真)。天気はあまりよくないですが…。ドイツは長袖長ズボンがちょうどいいぐらいの気候だそうで、何もしなくても汗だくになってしまうハノイとは大違いです!私も行きたかったな〜。ジュリは1つだけ残っていた2段ベッドの上の階を取れて、嬉しかったみたい。

さて、2週間で彼はどんな経験をしてくるでしょうか?

国連ハウス2015/06/27 16:43

以前にちらっと書きましたが、国連ハウスがやっと完成し、私たちのオフィスも今月初めに入居しました。この国連ハウスは「エコ」なビルであるということと(消費電力等の面で優れているそうです)中では国連機関が機関ごとではなく、テーマごとに座る(例えば、気候変動や環境に関する仕事をしている人は所属機関に関わりなく同じフロアに座る)というので、ユニークな試みとして国連内で注目されてきました。しかし、この話が出てから建設(まだ一部終わってない)まで10年近くが経過し、この間、財政面も含めいろいろな困難があり、こんなに大変なプロジェクトになるとは誰も思わなかったでしょう…。

ビル内部では、ほとんどがオープンスペースと呼ばれる個室なしのデザインなのですが(日本ではこれが普通ですよね…)私は副所長(今は所長代理ですが)なので個室が頂けるということでした。ところが、引越してみてわかったのが、私の部屋を含めた一部の個室には、ほぼエアコンがなしの状態なのです…。どうやら空調のシステムに問題があるようで。ハノイの暑さでは、エアコンなしではとてもではないですが働けないので、最初の数日は会議がない日は家に帰って仕事をしたりしていました。

その後、結局空調が治るまでには数ヶ月かかると言われ、部屋を移動するように言われました。またいろいろと交渉の末(他にも部屋を移りたい人が何人かいたので)私はUN WOMENの所長さん(日本人女性です!)とUNAIDSの所長さん(これも女性)の間の部屋へ移りました。この部屋は、前より全然涼しく、しかも他の2人の所長さんと一緒にランチを食べに行ったり、なんだか女子会ののりで、すごく楽しいのですー。ここに引っ越す前は、国連人口基金は他の機関とオフィスをシェアしていなかったので、こんな風に他の機関の人たちと交流できるのは嬉しいです。それがまさに、国連ハウスの醍醐味であるわけですが。全部で12機関が入居しています。(3機関、様々な理由で入居していない国連機関もハノイにあります。)

しかしそれぞれ独自のカルチャーがある12の国連機関が同じビルに入り、一緒に何かやっていこうとするというのは、大変なことです。特にビルの管理者がいて私たちがテナントというわけではないので、何から何まで自分たちで決めなくてはいけません。例えば、タバコに関する規定についても、いろいろな議論がありました。WHOを初め、保健に関する機関はノー・スモーキング・ポリシーを持っており、当然それを推し進めたいのですが、他の機関は、敷地内全禁煙にすると、門の前でたむろして喫煙するスタッフが出てくると国連のイメージが悪い、と。結局、とりあえずは敷地内全禁煙にして、様子を見ることで落ち着きましたが、一事が万事こんな感じでは、本当に時間がかかります。

このビルのサービス面でのマネージャーである国連職員に「あなた本当に大変な仕事してるよね。普通なら当然常識でしょう、と思えるようなことが実はいろんな人にとって常識じゃなかった、ということの発見の繰り返しじゃない?」と言ったところ「まさにそれ!でも、それが面白いんだよ!まさかと思うようなとこで反対意見が出てくるから!」と言っていました。相当忍耐強くないと彼の仕事はできないと思います…。

まだカフェテリアは完成していないし、いろんな面で不備があるビルではありますが、こんなにいろんな機関が同居しているという強みを生かして、これから面白いことを沢山やっていけたらいいなと思います。

「青少年白書」の完成2015/06/29 20:41

今日はまた仕事の話です。今朝、これまでベトナムの内務省と一緒に協力しながら作成していた、ベトナム初の「青少年白書」が完成し、その記念式典を開催しました。国連人口基金の仕事のうちの1つが青少年の育成に貢献することというのは意外に知られていないかもしれません。一番の切り口は青少年の性と生殖に関する健康なのですが、それを超えたところで、青少年の包括的な成長をサポートするということで、今回の白書の発行を支援することになりました。今回扱ったテーマは、教育と訓練、職業・労働、健康、そして青少年の政治・社会への参加、でした。

なぜこういうレポートが内務省から出されるのか?と思われる方もいると思うのですが、ベトナムでは比較的最近、内務省に青少年に関する事項が担当分野として追加されました。きっと「国家の安全」という観点から、青少年は内務省に担当させるということになったのかと思われますが、うーん、微妙な感じですね。でも、内務省の担当官の人たちはすごく働きやすくて、助かっています。彼らとしても、あまり青少年に関わる事項はこれまで専門にやってきた分野でもなく、経験も知識も少ないので、私たちの協力を特にありがたいと思ってもらえるのかもしれません。

ベトナムは、若者人口が人口全体の3分の一という、いわゆる「人口黄金期」の真っ只中です。こういう労働者人口が特に多い「黄金期」は、ここでは2040年まで続くと言われていますが、この人口構成の利益を享受するには、もっと青少年育成に国が力を入れていく必要があります。来年は、2005年に施行された「青少年法」の改定があることもあり、私たちとしては青少年に関するアドボカシーを強めていきたいと考えています。そして個人的には、近い将来ぜひ、青少年の性教育の拡充(量質ともに!)に取り組みたい!国連人口基金はだいぶ昔に性教育の分野で活動していたのですが、過去数年はあまり力をいれておらず、学校での性教育は皆無に等しい状態なのです…。

さて、明日は今度は保健省と労働省と共催のワークショップがあります。忙しいけれど充実した毎日です。