「趣味は読書。」by 斎藤美奈子2008/01/07 22:39

実はこの本を読んだのは去年の夏頃だったのですが、つい最近、感想をブログに載せていなかったのに気がつきました。私のお気に入りの文芸評論家、斎藤美奈子さんが、過去7年ぐらいの間のベストセラーを批評するというもの。

期待通りの「歯切れがいい」を通り越した、切れがよすぎるほどの語り口で書かれていて、面白くて一気に読んでしまいました。この本で紹介されている約50冊の本は、ちょうど私が日本を去った後に日本でベストセラーになった本がほとんどなので、私が読んだことがある本は「海辺のカフカ」、「五体不満足」等の2・3冊だけだったのですが、それでも楽しめました。なぜ、ベストセラー本って読んだ後に「えっ?だから?」と思ってしまうのか、彼女の分析を読むと納得。つまり、ベストセラー本を読むのは「善良な読者」であり、彼女のような「邪悪な読者」にうけるような本はベストセラーにはならないのです。もっと言えば、普段は本を読まないような人々の好奇心をくすぐり、彼らが読んで「気持ちよくなれる」ようなお話がベストセラーになるという訳。この本の最終章のタイトルのように、「ものすごく売れる本はゆるい、明るい、衛生無害」であることが多いというのは、個人的には納得できます。私も多分、邪悪な読者のうちの一人だろうから、ベストセラーで面白いと思えるものにはほとんど出会わないんだろうなー。

当然、美奈子さんはほとんどの本をばっさ、ばっさと批評して痛い所を突いていくのだけど、それでも読みたいなーと思えたのは、松永真理の「iモード事件」。雑誌「とらばーゆ」の編集長をしていた著者がNTTドコモにヘッドハンティングされ、iモードの開発プロジェクトチームを紅一点ながらリードしていったという話らしい。女性がどういう風に男性中心の企業でチームをひっぱっていったのかっていうのは、興味あります。著者が最初にプロジェクトチームの人に会った時は、皆が訳のわからない業界用語を話す宇宙人みたいだと感じたというから、組織文化の違いがどう変化していくのか、とかも知りたいし。

しかし、なんだかんだ言っても、ベストセラーが世の中のムードを反映しているっていうのはあると思う。そういう意味では、多少つまらなそうでも読んでみるのも、面白いのかもしれません。まあ、海外にいると日本語の本はなかなか手に入らないから、読みたくても読めないことがほとんどですが…。浦島にならない程度に、何が売れているかぐらいはチェックしておこうと思います。

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