夏休みパート1その2:アルルからコスタ・ブラヴァへ2009/07/18 22:58

アルルを出発して、どこかもう1つ南仏の観光スポットを見てからスペインへ向かおうということで、前から気になっていた'Pont du Gard'というローマ帝国時代に建てられた水道橋を見に行くことにしました。

途中、果物を売るスタンドが並んだ畑の中の道を通り、橋に近づいた所で「橋の右側へ」と「橋の左側へ」というサインがありました。大きな橋なので、両側からアクセスできるようになっているという訳です。駐車場に車を停めてから橋の方へ歩いていくと、見えてきたのは本当に巨大な石橋。一番長いところで275メートルあるそうです。セメント等なしで紀元前にこれだけのものをつくる技術があったというのは改めて驚きです。

別の意味で驚いたのは、ここが地元の人々のレジャースポットになっているみたいだったこと。橋がかかっている河岸には、日光浴ができるような設備があり、食べ物や飲み物を沢山持って、ピクニックをしに来ている人が沢山いました。河で泳いでいる人もいたし。ユネスコ世界遺産を見ながらのんびり、ってなんか贅沢です。次回来る時には私たちもピクニックの用意をして来ようと思いました。

その後、高速にのって一路コスタ・ブラヴァへ。今回私たちが滞在することにしたのは、コスタ・ブラヴァの長い海岸線の中でも割とマイナーなラ・スカラという町。コスタ・ブラヴァというと、有名になりすぎて超観光地になってしまったビーチもかなりあるそうですが。ビーチからはちょっと遠い(歩いたら25分くらい?)の所にある自炊もできるアパートメント・ホテルに泊まりました。とても新しい所のようで、敷地内にはまだ建設途中の建物もありました。

この日は、近くのスーパーマーケットでいろいろ買い物をして夕食をつくりました。前から試してみたかったスペイン版シャンパンのカヴァも買いましたが、安いのにおいしい!1本2ユーロ以下とかで買えてしまうのです…。私はフランスのシャンパンとの違いまではわからないので、これで十分でした。(続)

最近読んだ本:'Blink' by Malcolm Gladwell2009/07/18 23:34

まだ旅行記の途中ですが、旅行中に読んだ本のことを忘れないうちに書いておこうと思いました。この本は、私の上司が面白かったと言っていたので買ってみたのですが、ぐんぐんひきつけられて読めました。Malcolm Gladwellはアメリカの有名なジャーナリストで、前述したTED.comで彼のトークのビデオを見たので知っていましたが、本を読むのは初めてでした。

本の内容は、簡単に言ってしまえば、題名の「まばたき」をするぐらいの瞬間に、誰もが無意識のうちに行っている判断がどれほどパワフルかということについて、美術、医療、心理学、マーケティング、スポーツ、演劇、犯罪、戦争などいろいろな切り口から実証していく、という感じでしょうか。とにかく沢山の面白い例が出てきて、読んでいて飽きません。彼のスタイルなのでしょうが、彼が話すのを聞いているような感じの軽くてユーモアに富んだ文章がとっても気に入りました。特に面白いと思ったのが、この無意識の判断(又は直感)についてポジティブな例とネガティブな例が同じぐらい出て来るということです。つまり、これは安直な「もっと直感を信じましょう」というような本ではなくて、直感を信じていい時と、時間をかけた細かな分析が大事な時があり、そのバランスが大事、というメッセージが含まれてます。同時に、今の社会、情報を持てば持つほど的確な意思決定ができる、という「神話」があるようだけれど、実は的確な判断に必要な情報というのは限られている、という話も繰り返し出てきます。例えば、アメリカのある病院では、胸痛を訴えて救急室に来る人を診断するのに、4つの限られた質問に関するデータのみで対応を決めることにして、迅速で効果的なサービスを実現できるようになったそうです。普段情報の洪水にさらされている身として、何が大事な情報かを見極めることの大切さを改めて考えさせられました。

一つやや不満だったのが、出て来る例がほとんどアメリカの話だったこと。このテーマでは世界各国でもっといろいろな例があると思うのですけど。特に、人種に関する話が多かったので、アメリカではやっぱり人種問題って大きいんだなあ、と思わされました。アメリカでは黒人と犯罪を結びつけることを、ほとんどの人が無意識にしている、というのがリサーチでも証明されているという話が出てきます。Malcolm Gladwell自身、お母さんがジャマイカ出身なので、肌は白っぽいのですが、髪をのばすとアフロみたいになり、髪をのばし始めてから、以前よりずっと警察に止められたり、飛行場でセキュリティー・チェックをされたりということが増えたそうです。そこまでいかなくても、人種、性別、年齢による偏見というのは、多くの人が無意識のうちに持っていると言えるでしょう。本の中には、車のセールスに関する例で、この点が説明されていますが、私自身、ピーターと一緒に初対面の人に会うと、多くの人が彼が主な稼ぎ手だという前提で質問してくる、というような状況はよくあるので、感覚的によくわかります。大きな白人男性と小さなアジア人女性がいると、女性の方が稼ぎ手とはなかなか思えないみたいです…。

それと、この本に出て来る数秒の間に観察できる表情や態度の変化を読み取ることの大切さ、自分の中に無意識にある偏見に気をつけること、等はファシリテーションの仕事にも直接通じるので、その意味でも勉強になりました。

この本の面白さがあまりうまく説明できたかわかりませんが、私はとても楽しめました。邦訳は「第1感『最初の2秒』の『なんとなく』が正しい」というちょっと訳のわからん題名で光文社から出ています。これって誤訳だと思うのですけど。上に書いたように、Gladwellは「なんとなく」が正しいと言いたい訳では全然なく、正しいこともあるし間違っていることもある、いづれにせよ無意識のうちにする判断力というのは私たちが思っているよりパワフルで、これをもっと活用できれば的確な意思決定ができる、ということを言いたいのだと思います。

Gladwellがこの本の前に書いた'The Tipping Point'という本もかなり面白そうなので、読んでみたいと思います。